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骨盤臓器脱の治療

骨盤臓器脱とは

骨盤臓器脱とは、子宮、膀胱、直腸などの骨盤内の臓器が、本来ある位置から下がり、腟の方へ出てくる状態をいいます。加齢や出産、骨盤底の筋力低下などがきっかけとなって起こり、初期には違和感程度でも、進行すると「何かが下がってくる感じがする」「歩くとこすれる」「尿が出にくい、もれる」など、日常生活に支障をきたすことがあります。

命に関わる病気ではないことが多い一方で、症状が続くことで外出や家事、仕事がつらくなるなど、生活の質に大きく影響することがあります。治療には、ペッサリーなどの保存的治療から手術までさまざまな選択肢があり、症状の程度やご希望に応じて適した方法を検討します。

骨盤臓器脱の治療

骨盤臓器脱の治療は、症状の程度や生活への影響、年齢、全身状態、ご希望などをふまえて選択します。治療には、骨盤底筋体操などの保存的治療、ペッサリーによる治療、手術療法があり、症状が軽い場合は経過をみながら対応することもあります。治療は「脱出の程度」だけでなく、「困っている症状がどのくらいあるか」を大切にして検討します。

保存的治療

症状が比較的軽い場合や、まずは手術以外の方法を希望される場合には、骨盤底筋体操や生活指導を行うことがあります。骨盤底の筋肉を意識して鍛えることで、症状の進行予防や違和感の軽減が期待されますが、脱出そのものを根本的に治す治療ではありません。

ペッサリー療法

ペッサリー治療は、リング状の医療器具を腟内に挿入し、下がってきた臓器を支える治療です。骨盤臓器脱による違和感や下垂感をやわらげることを目的として行われ、手術を希望されない方や、まずは負担の少ない方法から始めたい方にも選択されます。

外来で対応できることが多く、患者さんの状態に合わせて大きさや形を選びます。ただし、ペッサリーは症状を和らげるための保存的治療であり、骨盤臓器脱そのものを根本的に治すものではありません。違和感が強い場合や、体に合わない場合には継続が難しいこともあります。

また、使用中は定期的な診察が大切です。長期間入れたままにすると、炎症、出血、おりものの増加、腟壁のただれなどが起こることがあるため、状態に応じて交換や洗浄を行いながら安全に管理していきます。

手術療法

症状が強い場合や、保存的治療で十分な改善が得られない場合には、手術を検討します。手術には、腟側から修復する方法や、腹腔鏡下で骨盤内から支える方法などがあり、病状や脱出のタイプ、再発リスク、全身状態に応じて選択されます。近年は、腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)など、低侵襲で再発率の低下が期待される術式も広く行われています。

腹腔鏡下仙骨腟固定術

腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)は、骨盤臓器脱に対して行う腹腔鏡手術の一つです。お腹に小さな傷を数か所つくり、内視鏡を用いて、下がってきた腟や子宮をメッシュで支え、仙骨に固定して本来の位置に近づけます。主に、子宮脱や膀胱瘤などを伴う骨盤臓器脱に対して行われる術式です。

この手術は、腹腔鏡で行うため体への負担が比較的少なく、術後の痛みが抑えられやすいこと、また従来の腟式手術と比べて再発率の低下が期待されることが特長とされています。術後の回復や日常生活への復帰のしやすさという点でも、有力な治療選択肢の一つです。

すべての方に適応できるわけではありません。年齢、全身状態、既往歴、脱出のタイプ、他の病気の有無などをふまえて、適応を慎重に判断する必要があります。また、メッシュを使用する手術であるため、術式の内容や合併症について十分に理解したうえで検討することが大切です。

治療を選ぶ際に大切なこと

骨盤臓器脱は命に関わる病気ではないことが多い一方で、違和感、歩きにくさ、排尿や排便のしづらさ、尿もれなどにより、日常生活の質を大きく下げることがあります。どの治療が適しているかは、お一人おひとりで異なります。症状のつらさや生活背景を丁寧にうかがいながら、無理のない治療方針を一緒に考えていくことが大切です。